産経新聞

静岡県知事「工事ゴーサイン出せぬ」 リニア新幹線の建設予定地視察 
6/14(金) 20:11配信

 静岡市葵区の南アルプス地下を貫通するリニア中央新幹線をめぐり、川勝平太知事と関係者は建設予定地や準備工事の現場を13日に視察した。静岡工区(延長約8・9キロ)では、トンネル工事による大井川の流量減少を懸念する県や利水者団体とJR東海の間で協議が続き、本体工事に着手できておらず、関係者の間に焦りが生じ始めている。川勝知事は視察後に「とてもじゃないがゴーサインは出せない。(JR側から)納得できるものが返ってこない限り、本体工事には入れない」と述べ、改めてJR側に地元の理解を得るまで丁寧な説明を行うよう求めた。

 川勝知事は11日の定例会見で同社のこれまでの対応を「会社が立てた事業計画を金科玉条のごとく相手に押しつけるのは無礼千万だ」と批判していた。しかし、リニア沿線の自治体からは令和9年開業の遅れにつながりかねない静岡工区の着工遅れに対する不満や国による調整を望む声が上がり始めており、水問題を旗印にJR側と協議を続ける本県は難局に立たされているといえる。

 13日の視察には川勝知事のほか、大井川の利水者団体の代表、県が設置した専門部会の委員ら約25人が参加。JR東海は宇野護副社長らが説明役を務めた。

 一行が最初に視察したのは、準備工事として事務所や作業員宿舎の建設が始まっている南アルプス山中の椹島(さわらじま)地区。導水路トンネルの建設予定地や大井川の護岸工事の現況も見学した。その後、さらに山間部の千石地区に移動し、土砂置き場や作業員宿舎建設予定地、工事用道路入り口の計画地などを視察した。

 2地区の視察を終えて取材に応じた川勝知事は、今のところ本体工事に着手できる状況にないとの認識を示し「JRには速やかに利水者が安心できるような回答を寄せてほしい」と注文を付けた。

 一方で同社の宇野副社長は「環境に配慮しながら(工事を)やっていることは確認してもらえたのではないか」と応じ、「準備工事も終盤戦。できれば引き続きトンネル工事が進められるよう、静岡県と話し合いたい」と望んだ。

 また、沿線他県に国の調整を望む声があることについて、川勝知事は「リニアは国策だというが、とんでもない。国が認可して後押ししていることは知っているが、JRが社運をかけて乗り出した大事業であり、JRが決めたこと」と指摘。リニア新幹線はあくまでもJR東海の事業で、当事者である同社が県や地元と協議すべきだとの認識を強調した。

 これに対し、宇野副社長は「事実として整備計画を作ったのは国であり、必要だと指示したのも国。国が計画してJR負担でつくるということだ」と、異なる見解を示した。

 県側と同社との関係は、同社が3月、トンネル湧水の全量を大井川に戻した上で、湧水量が毎秒3トンを超えれば工事を中断するなどの対応を約束したことで修復に向かっている。ただ、県は依然として同社に「誠意ある対応と県民に分かりやすい丁寧な説明」を求めており、本体工事着手に必要な地元と同社との協定は結ばれていない。

 南アルプス山中では昨年9月から、大幅な環境の改変を伴わない準備工事が始まっている。椹島など3地区には来年中にも作業員宿舎が完成する予定。一部宿舎については工事終了後に観光用の宿泊施設に転用することも検討されている。


読売新聞
知事、リニアで「代償を積まないと」…JR困惑 
6/14(金) 16:08配信

 静岡県の川勝知事は13日、未着工となっているリニア中央新幹線静岡工区の工事予定地である静岡市の南アルプス山中を視察した。知事はJR東海に求めている「代償」について、記者団に「地域貢献ということだ。(中間)駅をJR東海が負担して(沿線他県に)作る金額がひとつの目安になる」と述べた。JRに工事同意に対する経済的な見返りを改めて求める姿勢を示した。

 視察は、現在進められている準備工事の安全性や環境への配慮などを確認するために行われた。知事のほか、工事に伴い水量減少が懸念されている大井川の利水団体や関係市町の代表者らが参加した。JR東海の宇野護副社長らの案内で、建設中の作業員宿舎や、トンネル非常口の整備予定地などを回った。

 知事は視察後、「(JRは)速やかに利水者が安心できる回答をしてほしい」と同行の記者団に訴えた。他の沿線自治体が静岡工区の早期着工を求めていることについては「我々は水の問題に苦しんでいる。(他県も)事情を知れば分かるはずだ」と語った。

 一方で、宇野副社長は記者団に「準備工事は終盤戦に来ており、県と話し合いを続けながらトンネル工事に進みたい」と強調した。知事が求める「代償」に対しては、「(沿線の)自治体の財政状況が厳しく、プロジェクトを進めるために(JRが)駅を作ることにした」としたうえで、「静岡県に(リニアの)駅を設置するのは物理的に難しく、そういうことは考えていなかった」と述べた。

 リニア中央新幹線の工事を巡り、川勝知事が「代償」をJR東海に求める考えを示したことに波紋が広がっている。これまで県がJRとの公式の協議でこのような要求をしたことはなく、関係者は知事の意図をはかりかねている。

 知事は11日の記者会見で、県内にリニアの駅が建設されないことを指摘し、「(JRは)代償を積まないといけない。(中間)駅を作るお金を(沿線他県に)支払う平均額が目安になるのではないか」と、見返りについて初めて述べた。これに対し、JR東海の金子慎社長は12日の記者会見で、「(従来の協議内容と)違う意味なので、(JRに)ボールが投げられたという認識はない」と語った。

 県はこれまでのJRとの協議で、工事でトンネル内に湧く水を大井川に戻し、自然環境や利水への影響を最小限に抑えることに重点を置いていた。6日にJRに提出した中間意見書でも、具体的な水の戻し方などについて回答を求めた。

 JRは工事する南アルプスの自然保護に向け、県などが作る基金に資金提供する考えを示している。これは、水量減少に対する補償とは別の問題として議論されていた。

 知事の発言の意図は不明だが、関係者からは、静岡空港と直結する東海道新幹線の新駅設置の要求を視野に入れたのではないかという臆測も出ている。県は設置に向け、2014年度から予算を計上してきた。

 ただ、JRは掛川駅と近いことなどから否定的で、県と協議をしていない。知事も「水の話とは別次元」との姿勢を維持している。



静岡新聞
知事「南ア本体工事認めず」 リニア予定地を視察 
6/14(金) 7:30配信

 川勝平太知事は13日、リニア中央新幹線南アルプストンネル静岡工区(静岡市葵区)に関連する工事の現場を初めて視察し、大井川流量減少対策を巡って協議を続けているJR東海の宇野護副社長から説明を受けた。川勝知事は視察後、未着工のトンネル本体工事について「ゴーサインを出せる状況ではない」と現時点で認めない考えを示した。

 現場は3千メートル級の山に囲まれた大井川の源流部。椹島(さわらじま)の作業員宿舎の建設現場やトンネル湧水を流す導水路トンネル出口付近、千石(せんごく)の工事用トンネル出口の予定地付近などを見て回った。流域の水資源や生態系についてJRと協議している有識者や周辺自治体の担当者も同行した。

 視察中、有識者からは、トンネル掘削の際に地下水を豊富に含む破砕帯と呼ばれる地層をしっかり把握するよう求める意見が出た。

 川勝知事は終了後の取材に、質問事項をまとめてJRに提出した中間意見書の回答について「代償を含めて質問している。納得の行く回答が返って来ない限り、ゴーサインは出せない」として回答を待つ姿勢を強調した。

 その上で、リニア中間駅が整備される県に対してJRが「地域貢献」として一定金額を負担していると指摘、暗に本県に対する配慮を求めた。JRとの関係について「ウィンウィンになるようにしたい。敵味方ではなく、一緒に知恵を出し合う関係になるのがいい」と述べ、歩み寄りの余地を残した。

 ■JR東海副社長 「県と対話継続」

 JR東海の宇野護副社長は、川勝平太知事の視察終了後、取材に応じ「本格的なトンネル工事が進められるように県と話し合いを続けたい」と述べ、協議を継続する方針を強調した。

 川勝知事が言及したリニア通過県に対するJRの地域貢献については「自治体に(中間駅の)負担を求め続けるのは事業にマイナスだと判断した。各県に金銭を支払う行為ではない。静岡県では考えたことはなかった」と説明した。

 リニア開業に伴う東海道新幹線の県内駅への停車増は「今より悪くなることはない」としながらも「リニアは開業の前年にダイヤが固まる。その時に新幹線をどう組み替えるのか合わせて明らかにする」と具体的言及を避けた。


テレビ静岡
「戻さなければ干上がる」 知事がリニア工事現場を視察 JRは反論 
 6/13(木) 19:45配信

リニア中央新幹線
の工事で大井川の水量の減少が懸念されるとして、工事の開始が見送られている問題で、13日川勝知事が建設予定地を視察しました。

静岡市の中心部から車で3時間半あまり。県の最北端に位置し、リニア工事の拠点となる「椹島(さわらじま)」に川勝知事が現れました。

大井川の水量の減少が懸念されているトンネル工事。湧き出る水の戻し方や井戸が枯れた場合の補償などをめぐり、議論が続けられていますが決着が見通せません。

こうした中、知事は自らの目で確かめようとき13日現場を訪れました。

視察はJR東海の副社長と行われ、作業員宿舎の工事の状況やトンネルを掘り進める予定地を見て回りました。

視察後、知事は…

川勝知事「(川が)干上がるという事ですね、(水を)戻さなければ。だから全量戻すというのは当然だというのは確認されたわけです。(Qトンネルの本体工事にゴーサイン出せる?)今はとてもじゃないけどゴーサインを出せるような状況ではありません」

川勝知事のリニアの工事をめぐる発言で、紛糾は続いています。

6月5日、知事はリニアについて「静岡県には駅がなく何のメリットもない」と述べました。それに対しJR東海の金子慎社長は12日会見でメリットを示し、理解を求めました。

金子慎社長「(東海道新幹線は)6つの駅が静岡県内にあって3分の1以上の駅が静岡県内。リニアが大阪まで開業すればひかり・こだまが大幅に増発する余地が出る。一番大きなメリットがあるのは静岡県ではないか」

金子社長は2037年にリニアが大阪まで開業すれば、「のぞみ」が減り「ひかり」と「こだま」を増発する可能性が高いため、静岡県へのメリットは大きいと強調しました。さらに静岡市の中心部から井川地区につながる県道のトンネルについて、JRが約140億円を負担して建設することなどもメリットとして示し、理解を求めました。

建設予定地の視察が県とJRとの協議にどう影響し、今後の議論がどう進んでいくのか注目されます。


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