読売新聞 昭和61年(1986年)10月29日 朝刊

国鉄消えても「リニア」は消えず 

 国鉄の分割・民営化を図る関連法案が衆院を通過した28日、お先真っ暗だった国鉄のリニア・モーターカー(磁気浮上式鉄道)の前途に、逆に光が見えてきた。中央新幹線構想への導入が浮上してきたためで、内需拡大を理由に、自民党首脳の「検討せよ」の一言で関係省庁によるリニア活用の合同調査委員会が来月中旬に発足することになり、そのうえ、分割・民営化直前の来年3月には第一回の中間報告をまとめるという”手ぎわのよさ”。自前でのモデル線建設の金さえない国鉄技術陣は「これで、国鉄は消えても技術は残る」と、”21世紀の超高速鉄道”導入に大きな期待を寄せている。合同調査委員会は、国土庁を中心に建設、運輸の三省庁で設置。短、中、長距離と幅広く利用が可能なリニアモーターカーについて三分科会に分かれて、リニア導入後の@輸送特性A国土に与える影響・効果B都市構造に与える影響・効果――などを3年がかりで調査、検討する。

 費用は、国土庁の調査調整費から毎年3000万円ずつ出される。この種の調査では異例の力の入れようで、その背景には政府・自民党内で最近、リニアモーターカーを導入しようという構想が浮上していることが挙げられる。

 ”第二東海道新幹線”ともいうべき中央新幹線構想は東京−甲府−名古屋−鈴鹿−奈良−大阪を結ぶコースで、45年にできた新幹線鉄道整備法に基づく基本計画路線となっている。とくに山梨県は、リニアによってとりあえず都心と県中央部を結ぶ区間の新幹線を実現しようと計画。

 短距離ならすぐ実用化 自信満々の国鉄 

 国鉄が宮崎県日向市で研究しているリニアモーターカーは、実用化寸前。来年3月には、プロトタイプと呼ばれる実用タイプ車両「MLU002」1両が完成する。現在の実験車は全長10メートルで8人乗りだが、実用タイプ車は全長22メートル、44人乗りで最高時速420キロ。来年4月の分割・民営化に伴い、技術研究部門が「財団法人鉄道総合研究所」として独立。リニアの研究を引き継ぎ、同月からこの車両の走行試験を行う・「短距離なら、1、2年で実用化できる」と国鉄は自信満々。

 日向市の実験線の長さが7キロしかないためで、その後は3、40キロの実験線が必要。しかし、40キロの実験線建設には1000億円近くの費用がかかるため、国家的プロジェクトでないととても建設は難しい。このため、内需拡大の機運に乗ったモデル線建設の浮上を歓迎している。

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