朝日新聞 昭和48年(1973)年5月24日 朝刊

55年度までに優先建設 第二東海道新幹線 運輸省が構想 現在車改造し時速260キロ 

 運輸省は、東海道地域の増大する旅客需要を裁くためには、いまの新幹線電車の改良型による第二東海道新幹線を遅くとも55年度までには建設すべきで、しかも、現在計画、調査中の新幹線の次には別の地方新幹線に最優先して計画するとの構想を固めた。

実現には曲折ありそう

 国鉄が開発中のリニア・モーター駆動、磁気浮上方式による時速500キロ運転は、技術的難点、高い建設費、沿線への経済効果などからみて実用化は尚早と判断、第二東海道新幹線は、いまの新幹線電車の改良によって時速260キロ運転により、東京−大阪2時間20分−2時間40分をめざす。また、路線については、現在の東海道新幹線より内陸部分の山岳地帯を通り、名古屋以西は伊賀山中などを検討、東京−大阪間の直交最短ルートをめざしたいとしている。

 運輸省としては、この構想を秋にも鉄道建設審議会にはかって基本計画に組入れ、来年度から調査を始めたい意向である。運輸省が第二東海道新幹線計画の具体化を急ぐのは、当初55年度ごろとみられた現東海道の輸送力の限界が、最悪の場合51年度、よくても53年度当初になるとの見通しが強まってきたためだ。

 それによると@余暇時間の増大、所得の上昇により、新幹線利用客は年間10%程度の伸びをみせているA昨年3月に開業した大阪−岡山間の利用客は、四国への観光客激増などで予想の50%近くも伸び、新幹線の地方への進展に拠る東海道の負担は急増する見通しB新幹線の輸送需要見込みは、地方新幹線の開業後の東海道への流入増を見込まない段階でたてたもので非現実的、などだ。

 だが、この構想が実現するまでにはまだ多くの曲折がありそうだ。まず、自民党内には、第二東海道よりも中央新幹線を急ぐほうが地域開発効果が大きいとの有力な異論がある。また現在工事、調査中の新幹線をさらに辺地にまで延長すべきだとか、山陰、奥羽、四国などでも建設要望が高い。

 さらに、リニア・モーター方式による時速500キロ運転をめざす国鉄技術陣の熱意は高く、国鉄が反対に回る可能性もある。

 このほか、第二東海道は山間部中心の路線をつくるとしても、これと一般の東海道、中央線ぞいの都市との連絡をどうするか、末端の東京、大阪地区での騒音対策や用地確保をどうするか、などの問題がある。

 しかし、運輸省としては、東海道地域は現実に輸送力がパンク寸前になっている上に、航空、自動車。海運など他の輸送手段との相互調整の際には、第二東海計画の確定がカナメの役割を果すとしており、新谷運輸相としても、かねての持論である総合交通政策を推進するためにも、新構想実現に意欲を燃やしている。

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