昭和45年(1970年)6月26日 静岡新聞

空港問題に本腰 自民県連きょう勉強会 航空大衆化に対応 第二新幹線からめ 

 自民党県連はきょう26日午前10時半から開かれる全員協議会終了後、引き続いて議員総会を開き、空港問題についての勉強会を開く。同会には運輸省の原田昇左右官房参事官、日本航空の津崎武司調査開発室次長が講師として出席、航空輸送体系と静岡県を中心にした講義を受けるがすでに本県下には西部地域に空港誘致の動きがあるうえ、橋本運輸相の東海道メガロポリス交通体系整備構想もからんで本県も”航空大衆化時代”の前ぶれを感じさせる気配が濃くなってきた。

 同党県連が空港問題の研究と取り組むことになった理由は@航空界が国内、国際線とも順調な乗客の伸びをみせ、東京、大阪の中間に位置する本県にもいずれかは空港を必要とする時期が到来するA昨年5月策定された新全国総合開発計画では機能の地方分散が打ち出され、しかも昭和60年の航空貨客は現在建設中の成田空港ではさばき切れないB本県に空港建設が具体化した場合を予想して早めに功罪を研究、空港が大きなメリットがある場合には進んで誘致に乗り出す――ことを前提に研究することになったもの。

 確かに運輸省調査だと40年代にはいってからの航空貨客は増加の一途をたどり国際線は20%、国内線は30%、貨物輸送も国際線53%、国内線20%と急激に高度経済成長と情報化社会を背景に伸びている。

 しかも5年後の50年には国際旅客は現在の3倍以上の700万人(43年度は209万人)国際貨物は72万トン(同12万8000トン)昭和60年には国際旅客4300万人、国際貨物700万トンが見込まれ、当然、成田空港ではさばき切れない状態となる。

 このため東京−大阪周辺に新しい国際空港が必要となるが、橋本運輸相がイタリアのフィレンツェで今月開かれたECMT(欧州運輸大臣会議)で打ち出した構想も、同党県連に空港問題研究と取り組むキッカケとなった。

 同構想は激増する国際航空貨物の処理を東京、大阪から東海道の中間点に移すため新空港を建設、さらに第二東海道新幹線、第二東名高速道路を建設し交通体系を整備、東海道を巨帯都市にする計画。

 しかも第二新幹線はリニアモーターカーを使用、東京−大阪をわずか1時間10分で結ぶことから本県に仮に空港ができたとしても東京都はわずか20分−25分で直結できるという有利な位置にある。

 その上この第二東海道新幹線は東京−大阪間のうち駅は中間に一ヵ所という計画。空港が本県に計画されれば当然、第二新幹線の中間駅も設置され、本県の開発に一石二鳥、三鳥の利をもたらすことも考えられる。

 しかし一方では騒音を中心とするジェット公害も懸念されるため党県連としてはこの功罪ををまず研究、慎重に取り組む姿勢をとることにしたもの。

 また本県の西部には以前から国際空港誘致の動きがあり、さる42年には足立篤郎代議士が佐藤首相に誘致の陳情をしているほか、民間ベースでの誘致の動きも活発化してきている。

 これらの諸情勢を背景として同党県連が空港問題と取り組むことになったわけだが、すでに愛知県では貨物空港誘致に積極的な姿勢をみせ、中部経済連合会では空港問題研究会まで発足して研究中。果たして本県での空港問題が今後どのように発展するか極めて注目されている。
 

inserted by FC2 system