朝日新聞 昭和45年(1970年)4月13日 夕刊

10年後目標に建設 第二東海道新幹線構想 新方式列車で時速500キロ

 国際鉄道連合会(UIO)主催の「世界鉄道首脳者会議」が13日から東京で始ったが、同日午前9時から、東京港区の東京プリンスホテルでおこなわれた開会式あいさつで磯崎国鉄総裁は「1980年ごろには東海道新幹線の輸送能力は限度に達すると予想される。そのころまでに東京−大阪間に、もうひとつの新幹線を建設したい。それは在来方式によらない超高速の新しい陸上輸送機関にすべきだ」と述べ、国鉄が開発を進めている世界でも最先端を行く超伝導磁気浮上、リニアモーターカー方式による超高速第二東海道新幹線の構想を明らかにした。

 国鉄当局の説明では、これからの2年間で経済的な価値、技術的可能性などをつめて一応の結論を出し、あとは国家的事業として取り上げてもらう。その後、3、4年で計画を決定し、5年間ぐらいで建設する。列車の最高速度は「ひかり」の2倍以上、時速500キロを目指すという。

 国鉄は審議室、技師長室などを中心に「超高速鉄道調査グループ」をつくり、さっそく具体的な作業を始める。

 また運輸省技術懇談会も島前国鉄技師長を中心に超高速鉄道専門部会が調査を進めており、6月に開かれる日米貿易経済合同委員会には運輸省、国鉄の関係者が出席し、米国の専門家とも技術問題について意見を交換する予定。

 レールと車輪による現在の走行形式は時速300キロ程度までが限界といわれ、それから先は車輪が空まわりしてしまう。このため、時速500キロの新線では開発中のリニアモーターカー方式が本命となっている。

 リニアモーターカーは、ふつうのモーターの回転子を展開して線状に並べたもので、一方を軌道に、一方を列車にとりつけて相互に働く電磁力を利用して走る。

 また列車を支える方法には、車輪を使わずに列車を空中に浮上させる方法を研究している。

 これは、エア・クッション方式の「空気浮上」と磁石の反発力を利用する「磁気浮上」などがあるが、国鉄は超電導体を使った「磁気浮上」が利点が多いとみており、世界にさきがけての実用化に自信をもっている。

 すでに国鉄はリニアモーター、磁気浮上の二十分の一の模型を試作し、万博に展示している。

〈注〉国鉄技術陣の試案によると、第二東海道新幹線は東京−名古屋を直線的に結び、全長約440キロとなる。うちトンネル部分が40%(現在の新幹線は13%)。トンネルでない部分もプラスチック型カバーでおおい、どんな天気でも走れる全天候型とする。東京−大阪の所要時間は一時間。
 また最新のサイバネティックス(情報と制御の科学)を応用し、全線完全自動システム(ATO)を採用するとともに、すべての装置には何重もの安全装置をつけ、安全度の高い超高速陸上輸送機関になるという。


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