朝日新聞 昭和45年(1970年)3月12日 朝刊

新幹線網・法案要綱決る 着工順位はふれず 財源措置、引続き検討 

 運輸大臣の諮問機関である鉄道建設審議会(会長、鈴木善幸自民党総務会長)は11日午後、東京の赤坂東急ホテルで総会を開き、60年度完成をめざす鉄道幹線新幹線網建設のため、いまの国会に出す全国新幹線鉄道整備法案の要綱を決めた。これとともに約9000キロ(山陽新幹線を含む)にのぼる路線も決定、これを受けて自民党は共産党を除く各党に働きかけて各党共同提案による議員立法の形で、20日ごろ国会へ提出する。

 この日決った新幹線網と法案要綱は、さる5日の総会で了承された基本的な考え方に基づき、同日午前に開いた小委員会(小委員長 水田三喜男 自民党政調会長)でまとめたもの。昨年9月に自民党国鉄基本問題調査会(大橋武夫会長)と交通部会(細田吉蔵部会長)の合同会議で決った”自民党案”に、そのまましたがっている。

議員立法で提案 20日ごろ 

 新幹線網は全国の県庁所在地と主要都市をくまなく結んだもので、北海道と本州は青函トンネル、四国と本州は本州四国連絡橋2本、四国と九州は海底トンネルで連絡する。

 ただ、着工順位にはふれておらず、運輸大臣が経済社会の発展、国土開発のあり方、財政事情などをにらみ合わせながら審議会にはかって決めることになっている。運輸省は45年度予算で5億1000万円の調査費を計上しており、総きゅに作業をする目る段取り。

 鈴木会長によると、現在建設中の山陽新幹線(九州一号線を含む)のほかは、新国際空港のできる成田までの常磐、東北−上越と裏日本をつなぐ北回り路線、東海道二号などが、まず手がけられる見込み。できればこれらのうち一部は、来年度中にも着工し、50年ぐらいに完成することをねらっている。さらに青函トンネルができしだい(51年の予定)、札幌から福岡まで日本列島の”背骨”が通るようにしたいという。

 この日決った新幹線網を建設するには、山陽新幹線をのぞいても11兆3000億円もの資金が必要とされているが、この財源についてはまだ意見がまとまっていない。約半分を財政投融資などの政府出費であて、残りを利用債のような公債などでまかなう見通しだが、田中自民党幹事長らの提唱している自動車新税など、なんらかの措置が必要になろう。

 これらについては、46年度予算を編成する時までに政府と自民党間で結論を出すことになっているが、多額の資金を要するものだけに、今後に大きな問題として残された。

実現へ資金調達に疑問 

 《解説》”網”の名にふさわしい規模で、新幹線を全国に敷こう――という法案が、いよいよ今国会に提出されることになった。これを決めた鉄道建設審議会のメンバーに、自民、社会、公明各党のメンバーが加わり、”共同提案”の形で出すだけに、内容が”総花的”になるのは、かねてから予想されていた。

 しかし、これを作り上げるには、昨年の自民党案ができた段階でも、山陽新幹線を除いて11兆3000億円かかるとみられ、最近では15兆かかるとの見方も出ている。目標通り60年度に完成させるなら、1年に1兆円かかるわけで、はたしてこれだけの資金をどう調達するか、それだけの資金をかけるほどの必要性があるのか――など、疑問視するむきも多い。政府提案にならず、議員立法になったのも、この疑問を深めている。また、鈴木会長らのいうように60年度に完成するかどうかも危ぶむ声がある。

法案要旨
―略―


もどる

inserted by FC2 system