朝日新聞 昭和44年(1969年)9月18日 朝刊

主要全都市を結ぶ 自民が新幹線鉄道網案 

 全国の主要都市をくまなく結ぶ総延長9000キロの新幹線網( )を昭和60年度までに建設する――自民党の国鉄基本問題調査会(会長、大橋武士氏)と交通部会(部会長、細田吉蔵氏)は17日の合同会議で、全国新幹線網の整備について、このような自民党としての基本方針を決めた。自民党は近く、この基本方針を政務調査会で正式に決め、運輸省の鉄道建設審議会にはかるが、運輸省は同審議会の建議を受けて、次の通常国会に「全国新幹線鉄道網建設法案」(仮称)を提出する意向だ。

60年度までに建設 総延長9000キロ 

 新幹線網の建設は、国土開発自動車道と並んで、わが国の将来の輸送体系を整備するための主要な柱をされている。しかし、総延長7600キロに及ぶ幹線自動車道は、東名の全面開通、中央道の一部完成にみられるように、建設が進んでいるのに対し、新幹線網の整備は、さきに閣議決定された新全国総合開発計画で大まかな写真が示されただけで、立遅れが目立っている。

 こうした背景から、自民党としても45年度から着手できるよう、急いで新幹線網整備の基本方針を決めたもので、その計画によれば
@総延長を9000キロ(現在工事中の大阪−福岡間の山陽新幹線560キロを含む)とし、北海道、本州、四国、九州のほとんどすべての県庁所在地、主要都市をくまなく結ぶ
A昭和60年度までに全路線を完成させることとし、具体的には45年度から5カ年計画をつくって着工する
B総建設費は約11兆3000億円で、その内訳は半分が政府出資、残りは鉄道債の発行や新しい目的税の創設、あるいは営業開始路線の収入をあてる
――などとしている。

 また自民党の国鉄基本問題調査会は、建設を45年度から始めるとして各5カ年計画(一部6カ年計画)の大まかな建設目標と建設費を試算したが、それによると
@第一次計画(45−50年度)では1500キロを完成させ、他に2000キロ分を工事し、建設費3兆1200億円
A第二次計画(51−55年度)は同じく3500キロ完成、2000キロ工事、建設費3兆9600億円
B第三次計画(56−60年度)4000キロ完成、建設費4兆2200億円
となっている。

 この自民党の基本方針は近く、鉄道建設審議会(会長、鈴木善幸自民党総務会長)で検討されるが、大きな手直しなしで11月末までに原田運輸相に建議される見通しだ。一方、運輸省としても急いで新幹線網を整備すべきだとの原則論では自民党と一致している。

建設費調達メドなし 

《解説》自民党の国鉄基本問題調査会と交通部会は17日、全国新幹線網の整備案を決めたが、これが計画通り「出発進行」となるかどうか、そのカギは財源問題にある。新幹線網の建設を急ぐよう、事あるごとに叫んできた運輸省が、いまだに全体計画を決めかねているのも、巨額な建設費を調達するメドがつかないでいるからだ。

 この財源問題について自民党案は総建設費11兆3000億円のうち、半分を政府出資とし、残り半分を公債や新税などでまかなうとしているが、運輸省としては、果してこの通り実現できるかどうか、かなり深刻な疑問を投げかけている。したがって同省は、自民党側が建設費調達について、もっと具体的で確実な方法を示さぬ限り、直ちに自民党のいう9000キロ建設を政府決定にはできないとの態度だ。

 もともと自民党の国鉄基本問題調査会の中には、5000キロ建設案、7000キロ案、9000キロ案という3つの案があった。これが最も規模の大きい9000キロ案に落着いたウラには、鉄道建設と密接な地元、議員の利害や、解散気構えの政局とからんでいることも見逃せまい。しかし、問題はそれだけでなく、基本的にはやはり、立遅れた輸送体系の整備が、わが国の経済発展にとって欠かせぬということだろう、

 したがって、この新幹線網の整備も、道路や港湾とともに社会資本をどのように充実させるか、またそのための財源をどう手当てするか、という問題に帰着することになろう。

ホームページ管理人の補足】
 この記事には新幹線路線図が添付されている。その中には現在の中央本線に沿った路線、東京−名古屋−大阪をほぼ一直線に結ぶ路線も含まれている。前者が後の中央新幹線、後者が後の第二東海道新幹線にあたると思われる。

もどる  

inserted by FC2 system